地震で被災された社員から、給与の前借りの申し出を受けた場合はどうしたらいいでしょうか?
労働基準法第25条に「非常時払い」の規程があります。
社員が、本人又はその収入で生計を維持する者が災害を受けた場合の費用にあてるため請求したときは、使用者は、支払い期日前であっても「既往の労働に対する賃金」を支払わなければなりません。
こちらであれば、借金の申し入れとは違い、「既往の労働に対する給料の非常時払いの請求」です。
すでに働いた分の給与を支払えば足ります。(通常、日割り計算する。)
借用書とか利息は通常とらないです。
なお、非常時払いの対象以外の貸し付けについては、法的な義務はないので、あくまでも企業の判断で任意に応じるかを決めて構いません。
非常時払いを超えた貸し付けについては、「金銭消費貸借契約」を交わすことになります。
「既往の労働に対する非常時払い」の場合は問題になりませんが、もし非常時払いの他に別途、会社から前借りを受けた場合、給与から貸付金を天引きしてもいいのでしょうか?
労働基準法第24条第1項には「賃金の全額払いの原則」があります。
また労働基準法第17条には、「前貸しの債権との相殺禁止」があります。
とはいっても、社員の自由な意志に基づいて相殺に同意している場合、給与から相殺することができます。前貸しの賃金控除について明示し、社員から同意の一筆をとっておくとよいでしょう。
もっとも、前借りが当月の給料に限定される場合(無利息、給料の手取額の範囲内での貸付)は、賃金の前払いにすぎないともいえるので賃金全額払いの趣旨にも反しないと考えられます。
前貸し金の控除については、労使協定を締結して行うこともできます。協定の中に「貸付金」を一項目入れている企業も多いです。ただ、当月の給与前借りについて、そのために労使協定を結ぶ必要はないでしょう。
投稿者 横浜市 社会保険労務士法人エール | 港北区・新横浜の社労士がマイナンバー対応&労務問題解決 :2011年3月18日