雇用に必ず伴う労災保険や雇用保険などの労働保険手続き、社会保険等煩わしい手続きを、専門家が代行いたします。その際に寄せられる、よくあるご質問を掲載しました。
労働保険とは、 労災保険法による労災保険と、 雇用保険法による雇用保険とを総称した言葉です。労働保険は、 法人・個人を問わず、 労働者をひとりでも使用している事業場は、 必ず加入することが法律で義務づけられています。従って、労働者を雇用している事業主がこうした保険に加入していないと違法行為となるだけでなく、必要な保険給付が受けられない労働者や、代替給付を行った国から損害賠償請求を起こされる可能性もあります。
労災保険制度は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等に対して必要な保険給付を行い、あわせて、被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者とその遺族の援護、労働災害の防止等を目的とする労働福祉事業を行う総合的な保険制度です。雇用保険制度は、労働者が失業した場合など雇用が不安定になる局面において、迅速かつ安定的な再就職を支援するために求職期間中の所得保障を行うことなどを目的に運営されています。また通常の失業給付以外にも雇用する側である事業主に対し雇用安定化施策に対する助成金を数多く設置しています。
【当然適用事業】
一人でも労働者を雇用して、事業が行われている限り、当然に労災保険・雇用保険の保険関係が成立する事業をいいます。大抵の会社は当然適用事業所に該当します。
【暫定任意適用事業】
農林水産の事業のうち、常時使用労働者数が5人未満の個人経営の事業は任意で申請することにより適用事業となります。
雇用保険は労働者にのみ適用される保険で、取締役に対しては適用されません。ただし、兼務役員として従業員としての賃金も支給されている人については、従業員賃金部分についてだけ雇用保険を適用させることが可能となります。これに対し、労災保険は取締役には原則として適用されません。ただし労災保険ではその人命にかかわる給付の性質から一部例外的に特別加入制度を設けています。取締役の場合、第1種特別加入対象者として加入することが可能です。特別加入できる対象者は以下の通りです。エールではこれら特別加入手続きも扱っていますのでお問い合わせ下さい。
労働保険事務組合に加入している中小事業主
※常時300人(金融業・保険業・不動産業・小売業では50人、サービス業・卸売業では100人)以下の労働者を使用する事業主
一人親方
海外派遣者等
基本的には遡及加入が正しいやり方ですが、行政は申請ベースで手続きをしますので事業所の自主性に任されているのが実情です。ただし、未加入を放置しておくと当然リスクも発生します。 事業主が故意又は重大な過失により、労働保険関係成立届(労働保険への加入届)を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、
<事業主から>
当該年度から最大2年間遡った労働保険料及び追徴金(10%)を徴収 するとともに、以下の場合1・2により、労災保険給付額の40%〜100%を事業主から徴収することとなります。
<労災保険給付額の40%〜100%を事業主から徴収する場合>
1.労働保険の加入手続をとるよう労働局職員等から加入勧奨・指導を受けていた場合
→ 事業主が故意に加入手続をとらないものと認定し、労災保険給付額の100%を徴収
2.それ以外で労働保険の適用事業となってから(労働者を雇用してから)1年を経過していた場合
→ 事業主が重大な過失により加入手続をとらないものと認定し、労災保険給付の40%を徴収
また雇用保険については、行政よりも労働者側からの賠償請求となる可能性があります。雇用保険はいわゆる失業保険と呼ばれるとおり、失業時に加入期間に応じた給付を受けられるものです。従って、未加入期間分は給付額が減少してしまいます。雇用保険の加入は2年間しか遡ることができませんので、もし2年を超える期間未加入期間があったとすれば、遡及(そきゅう)加入をすることもできません。当然その期間に相当する額は損害金として未加入を放置していた会社に負わされることになるでしょう。
労災保険は原則として全労働者が対象となりますが、雇用保険は被保険者に該当するものだけが対象となります。被保険者は以下の適用除外対象者を除く全ての労働者です。
【適用除外対象者】
【雇用保険被保険者区分】
(1)一般被保険者 | (2)〜(4)以外の人 |
(2)高年齢継続被保険者 | 同一の事業主の適用事業に被保険者として65歳に達した日前から引き続き雇用されている人 |
(3)短期雇用特例被保険者 | 季節的に雇用される人又は短期の雇用に就くことを常態とする人 |
(4)日雇労働被保険者 | 日々雇用される人又は30日以内の期間を定めて雇用される人 |
事業の種類によって労災保険料率、雇用保険料率が決まっています。それぞれ自社の事業に該当する料率を使用して計算します。労災保険、雇用保険の国への納付は、一般的には労働保険料として同時に行います。納付の方法は確定申告制をとっており、年度当初に概算で申告・納付し翌年度の当初に確定申告の上精算することになっております。実務的には前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付します。これを「年度更新」といいます。 概算保険料の額は、原則として当該年度の支払い予定賃金の総額に対し保険料率を乗じたものを納付します。いずれにしても最終的に確定精算するので損得はありません。
会社は年に1回労働保険料を納付しますが、従業員負担分については毎月徴収します。労災保険は全額会社負担であるため従業員の給与から控除するのは雇用保険だけになります。控除する雇用保険料は毎月支給する賃金に対して雇用保険料率を乗じた額です。雇用保険料は支給する賃金に対応する額しか控除してはいけないことになっていますので、1回の賃金で複数回分の雇用保険料をまとめて控除することはできませんのでご注意ください。
広義の社会保険とは公的保険全般を指していますが、その中でも特に医療保険と年金保険に関するものを総称して社会保険と呼ぶのが一般的です。会社員であれば健康保険と厚生年金保険がそれに該当します。健康保険と厚生年金保険の適用事業所に雇用された会社員は自動的に被保険者資格を取得することになります。従って会社は社員を雇用したときには社会保険の資格取得手続きを行う必要があるのです。
新規に法人である会社(株式会社・有限会社など事業規模を問わず)を設立したときは、必ず社会保険の新規加入の手続が必要です。これを強制適用といいます。強制適用となる事業所は以下の通りです。
【健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所】
(1)個人経営の事業所で、常時5人以上の従業員を使用する法定業種に該当するもの。 |
(2)国、地方公共団体、法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの。 |
(3)船員法1条に規定する、船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶。(厚生年金保険のみ) |
※農林水産業・サービス業・法務業・宗教業は、法定業種に該当しないので、個人経営で常時5人以上の従業員を使用していても強制適用事業所とはなりません。 |
社会保険では、「法人に使用される者」がいる場合は適用除外者を除いて加入が義務づけられています。従って、役員だけでも社会保険に加入する必要はありますし、たとえ社長一人でやっている会社であろうとも法人を設立した時点で加入義務が発生します。
厳密にいえば社会保険は適用事業所となったとき(法人設立の日)から加入する必要があります。従って遡って入る必要があります。実務的には社会保険事務所では申請のあった月を起点として加入処理してくれるところが多いので、加入義務があるとわかった時点ですぐに手続きをとるようにしてください。(取り扱い詳細については事業所管轄の社会保険事務所により若干異なります)
社会保険事務所の調査が入れば、社員の加入時点まで遡って加入させられる可能性があります。更に会計検査院の調査が入ると、最大2年間遡及加入させられ保険料2年分徴収されてしまいます。法律上の罰則が適用されることはほとんどありませんが、遡及支払いのインパクトはかなり厳しいものがあります。未加入状態の放置は大きな企業リスクになります。
社員が会社の社会保険の資格を取得した時点で市区町村に国民健康保険の脱退手続きをとるように指導してください。社会保険の資格を取得していたにもかかわらず国民健康保険を使用してしまうと、国民健康保険に一度返還手続きを取った上で、会社の加入する健康保険に請求するという二重の事務処理が必要になり、煩雑になります。
就労形態、職務内容など総合的に勘案して、パートタイマーが、事業所と実態的かつ常用的使用関係と判断され、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、その事業所の従業員の4分の3以上の勤務であれば、原則として被保険者として取り扱われます。ただし、4分の3という基準はあくまでも「おおむね」とされており、勤務時間や勤務日数が基準に該当しない人でも、就労形態や就労内容などを総合的に判断した場合、常用的雇用関係が認められれば被保険者になることがあります。
社会保険料というのは各人の月給に一定の社会保険料率を掛けて計算されているのですが、この月給は当然個人によりバラツキが多く行政側のみならず会社としての給与計算や経理処理も煩雑になりがちです。そこで、社会保険では月給を一定の額ごとに区切り、それぞれの区切りを「標準報酬月額」として大別する手法をとっています。社会保険では1年に一度各被保険者の標準報酬月額を実際の報酬(給与)と見合ったものにするため、標準報酬の改定が行われます。これを定時決定といい、毎年4、5、6月の3か月の報酬の平均をとり7月に決定されます。
この時決定された標準報酬月額は、その年の9月より改定され、実際は9月分の保険料(10月給与控除)より変更され、原則的には翌年の8月まで適用されます。対象者は7月1日現在の被保険者全員となります。(※ただし、6月1日より7月1日までの間に被保険者となった人及び7月より9月までのいずれかの月から随時改定を行なわれる人についての定時決定は行われません。)
社会保険料は毎月翌月末日までに支払うことになっています。通常は、銀行の引き落とし口座を社会保険事務所に届け出るため、翌月末日に自動引き落としとなります。なお、社会保険料は会社と従業員が折半で支払うことになりますので従業員負担分については給与から控除します。
資格取得時や毎年の定時決定により決定した標準報酬月額が次の算定時期まで1年を通して変更しないか?というと、そうではありません。標準報酬月額は基本的に固定されるため、固定された後に賃金が大幅に上下した場合、実態と標準報酬月額の間に開きができてしまい保険料の徴収が実態に合わないことになってしまいます。そこで、一定の条件を満たした場合には、年度途中であっても標準報酬月額を変更するという手続きがあります。これを随時改訂といい、「月額変更届」を提出します。月額変更は、固定的賃金に大幅な変動があった月以後の3ヶ月の平均を計算した結果、2等級以上の変動があり、かつ変動月からの3ヶ月のすべての月において、支払基礎日数が20日以上あった場合に適用されます。標準報酬月額の改定は、4ヶ月目からとなります。手続きは「月額変更届」に変更月からの3ヶ月に支払われた給与、その他必要事項を記入し、保険者(社会保険事務所または健康保険組合等)へ提出します。
社会保険における被扶養者の範囲は、次の通りです。
(1)直系尊属(父母、祖父母など)
(2)配偶者(内縁関係を含む)
(3)子・孫および弟妹
(1)3親等以内の(上記以外の)親族
(2)内縁関係にある配偶者の父母及び子
扶養しているとみなす収入要件は、次の通りです。
その親族の年間収入が、130万円未満 (公的年金が受給できる人は180万円未満)、かつ被保険者本人の年間収入の半分以下
その親族の年間収入が、130万円未満 (公的年金が受給できる人は180万円未満)、かつ本被保険者人からの援助額以下
収入要件については恒常的な収入がなくなった時点で、扶養に入ることができます。例えば、結婚して配偶者が仕事を辞めた場合、その時点で扶養に入れます。(ただし、失業給付をもらっているときは、原則として扶養に入れません。)また、扶養に入るときには収入証明が必要になる場合があります。特に健康保険組合などでは厳しく審査されることが多いので必要書類の確認を行ってください。
賞与にも社会保険がかかります。
従って通常の標準報酬月額以外に標準賞与額をもとに社会保険料の算定を行い管轄保険者に連絡する必要があります。
具体的には3か月を超える期間ごとに支払われる賞与につき、1000円未満を切り捨てた額を標準賞与額として、保険料の額が計算されます。
(標準賞与額の上限:健康保険は年間540万円(毎年4月〜翌3月末)、厚生年金保険1ヶ月150万円)
標準賞与額を決める場合にそのもととなる賞与は、賃金、給料、俸給、手当、賞与、その他いかなる名称であっても、被保険者が労務の対償として受けるすべてのもののうち年3回以下のものを対象とします。
ただし、大入り袋や見舞金のような臨時に受けるものは含まれません。
賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と同様に、標準賞与額にそれぞれ、健康保険料率・厚生年金保険料率をかけて算出します。
賞与支払届を提出すると事業所に、毎月の保険料と標準賞与額にかかる保険料とを合算した保険料の額が記載された納入告知書が社会保険事務所等から送られてきます。
したがって、賞与の保険料は、毎月の保険料と合わせて、月末までに納付することになります。
上記にないご質問やご相談など、社会保険や労働保険(労災保険・雇用保険)の専門家が直接回答いたします。 お気軽にお問い合わせください。
投稿者 横浜市 社会保険労務士法人エール | 港北区・新横浜の社労士がマイナンバー対応&労務問題解決 :2008年1月18日