震災に伴う計画停電による休業と休業手当について
弊社にも大変 問い合わせが多い東北地方太平洋沖地震による操業停止等に伴う休業手当の支払いについて取り上げます。
計画停電による操業停止や計画停電による勤務時間の短縮に関して、労働基準法第26条との関係に関して、昨日3月15日に、厚生労働省から通達が出ました。
休業手当(労働基準法26条)関係の確認
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中 当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。(不可抗力によるものはこの限りでない。)
■不可抗力に関して
1 その原因が事業の外部より発生した事故であること、
2 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのでき
ない事故であること
の2つの要件を備えたものでなければならないとされています。
今回の地震による計画停電にともなう一時操業停止や勤務時間の短縮については、不可抗力によるものであると考えられ、休業手当の支払いは不要となります。
昨日3月15日の厚生労働省が労働基準局に対して出した通知において、「計画停電の時間帯における停電を理由とする休業については、原則として労働基準法第26条の休業手当の支払いは要しない」
とされています。
ただ、あくまで計画停電の時間帯についてであり、計画停電の時間帯を除く時間帯において休業を行った場合には、基本的に休業手当の支払いが必要とされています。
今回の計画停電により社員に休業させた場合(3月15日通達)
⇒ 休業手当を払わなくていい場合がある
POINT① 計画停電中の休業は、休業手当の支払いは不要。
停電時間についての休業中の賃金は支払わなくてもよい。 ただ、あくまで計画停電の時間帯についてであり、計画停電の時間帯を除く時間帯において休業を行った場合には、基本的に休業手当の支払いが必要とされています。
POINT② 計画停電の前後の休業についても、休業手当が不要なることがある。
計画停電の時間帯を除く時間帯において休業を行った場合には、使用者の責めに帰すべき休業となり休業手当の支払いが必要とされています。
が、例外として、通達では
「他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには計画停電の時間帯以外の時間帯も使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」
とされています。
停電中に休業することはもちろん、その前後などの時間の営業が現実的に難しいような場合は、停電中の時間以外の休業についても、休業手当を支払う必要はないということになります。
POINT③ 計画停電が実施されなかった場合に、休業とした場合でも、休業手当が不要となることがある。
計画停電が予定されていて、実際には計画停電が行われなかった場合ですが、これについても、計画停電の予定に合わせて休業を計画していた場合に、直前に停電が回避されたとしても急に操業ができ
ないケースもあるでしょう。
こうした事業所では、休業手当の支払いは必要ないということになります。
いずれにしても一概に休業手当の支払いが不要だとも言い切れませんので、前後の事情も勘案して、ケースバイケースでの判断となるでしょう。
一部休業した場合の休業手当の考え方はどうなるか?
計画停電の時間帯を除く時間帯において休業を行った場合には、使用者の責めに帰すべき休業となり休業手当の支払いが必要とされています。(前述②のケースを除く)
1日の所定労働時間の一部に,使用者の責めに帰すべき事由による休業がなされた場合は、どう考えればいいでしょうか?
その日についての考え方ですが、この場合にも平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければなりません。
(平均賃金を時間で按分するという考え方ではありません)
ですので、現実に働いた時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払うことになります。
実務上の取り扱い
今回の問題は、休業のリスク等を使用者が負うのか、労働者が負うのかという点です。
計画停電では、繰上げ・繰下げ勤務、休日・夜間操業、在宅勤務などの柔軟な対応も考えられます。
電車遅延・運休については、会社にこれない人に対しては、有給休暇を使用してもらう、自宅勤務が可能であれば自宅にて業務を行ってもらう、遅刻であれば繰り下げ勤務を認める なども現実的な対応といえるでしょう。
法的な問題を検討するだけでなく、このような状況下では社員の事情も考慮する必要もあるかと思われます。もちろん会社の状況、今後の見通しもみて、バランスある判断が必要でしょう。
今回の震災に伴う事業縮小により休業手当を支給する場合に、雇用調整助成金が活用できます。
首都圏でも計画停電の影響による事業縮小、休業させる場合に活用するケースも増えてくるのではないかと予測されます。
被災地においては、雇用調整助成金の要件も下記のように緩和されました。
東北地方太平洋沖地震の影響による下記の理由で、社員を休業せざるを得ない場合、雇用調整助成金を活用できることになりました。首都圏の事業所も計画停電による事業縮小、休業を余儀なくされるような場合、活用できます。
・人的・物的交通の阻害又は途絶
・需要の減少又は集客の困難
・従業員の出勤困難
・事業所、設備等が破損し、修理業者の手配や修理部品の調達が困難ため、
早期の修復が不可能であることにより事業活動の阻害
・そのほかこれに順ずる経済事情の変化
被災地においてはさらに、雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金の要件緩和が発表されています。
【要件の緩和】
東北地方太平洋沖地震などの災害に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合に
(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所に限る)
要件を下記の通り緩和する。
・生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮する
・平成23年6月16日までの間は震災後1か月間の生産指標の値が減少する見込みである事業所の
事業主も対象とする。
・同月までの間に提出された計画届については、事前に届出たものとして取り扱う。
【対象期間】
初回計画届の届出の際に事業主が指定した日(平成23年3月11日以降に限る)から1年間